胸やけ、胃もたれ、腹痛、下痢・便秘、血便、健診での肝機能異常など、消化器の不調にはさまざまな原因があります。ここでは食道・胃腸・肝臓・胆のう・すい臓の44疾患を、症状・検査・治療・受診の目安から解説します。
当院では症状の経過や服薬、検査結果をもとに診察し、必要に応じて内視鏡・超音波などの検査や専門医療機関への紹介をご案内します。気になる疾患名を開くと、詳しい説明をご覧いただけます。
急いで受診したい症状
突然の激しい腹痛、吐血、大量の血便、出血に伴う冷汗・失神などは救急受診が必要です。意識が遠のく、立てないほどつらい場合は119番へ。黒いタール状の便、水分が取れないほどの嘔吐、発熱を伴う黄疸も、通常の予約を待たず医療機関へ相談してください。
症状から関連する病気を探す
症状は重なり合うことがあり、場所や痛み方だけでは病気を特定できません。以下は説明を探すための目安です。
胸やけ・飲み込みにくさ
酸っぱいものが上がる、食べ物がつかえる、飲み込むと痛い。
食道の病気を見る
胃もたれ・みぞおちの痛み
少量で満腹になる、吐き気、食後の不快感が続く。
胃・十二指腸の病気を見る
下痢・便秘・血便
便通が変わった、お腹が張る、便に血が混じる。
腸の病気を見る
食道
食道は口から胃へ食べ物を運ぶ管です。胸やけやつかえ感のほか、食べ物が通りにくい症状を繰り返す場合は、炎症・狭窄・運動の異常などを調べます。
逆流性食道炎
どんな病気?
胃酸などの胃の内容物が食道へ逆流し、粘膜に炎症や傷ができる病気です。食道と胃のつなぎ目の働きの低下、食道裂孔ヘルニア、肥満、食後すぐ横になる習慣などが関係します。
主な症状
胸やけ、酸っぱいものが上がる感じ、げっぷが代表的です。のどの違和感、長引く咳、胸の痛みを伴うこともあります。ただし、同じ症状は心臓など別の病気でも起こります。
検査と治療
症状や服薬を確認し、必要に応じて胃カメラで食道の傷や他の病気を調べます。胃酸を抑える薬に加え、食べ過ぎや就寝直前の食事を避けるなど生活を調整します。再発する場合は維持治療を相談します。
受診の目安
胸やけを繰り返す、飲み込みにくい、体重が減る場合は受診してください。強い胸痛や冷汗・息苦しさ、吐血、黒いタール状の便がある場合は、逆流と決めつけず救急受診が必要です。
好酸球性食道炎
どんな病気?
アレルギー反応に関わる白血球の一種、好酸球が食道に集まり、慢性的な炎症を起こす病気です。食物などへの反応が関与すると考えられますが、原因は十分に解明されていません。
主な症状
食事がつかえる、飲み込みにくい、胸やけ、胸の痛みなどがみられます。炎症が続くと食道が狭くなり、食べ物が詰まることもあります。逆流性食道炎と似ているため、症状だけでは区別できません。
検査と治療
胃カメラで食道を観察し、粘膜の組織を採って好酸球の増加や他の原因を確認します。胃酸を抑える薬などを使い、必要に応じて専門医が食道の粘膜に作用するステロイド治療、食事療法、狭い部分の拡張を検討します。
受診の目安
つかえ感を繰り返す、食事に時間がかかる場合は相談してください。食事制限は自己判断で広げず医師と相談しましょう。食べ物が詰まり、水や唾液も飲み込めない場合は救急受診が必要です。
食道カンジダ
どんな病気?
カンジダという真菌が食道で増え、炎症を起こす感染症です。糖尿病、免疫機能が低下する病気や治療、抗菌薬やステロイドの使用などが関係することがあり、背景の確認も大切です。
主な症状
飲み込むと痛い、食べ物がつかえる、胸の奥が痛むといった症状がみられます。口の中に白い付着物が生じることもありますが、口の症状がなくても食道に感染している場合があります。
検査と治療
症状や持病・服薬から判断し、必要に応じて胃カメラで白い付着物を確認し、組織などを調べます。治療は抗真菌薬が中心です。飲み込めない場合には点滴治療も検討し、薬の相互作用にも注意します。
受診の目安
飲み込む痛みが続く、食事量が減る場合は早めに受診してください。治療中の薬は自己判断で中止せず相談しましょう。水も飲み込めない、強い胸痛、吐血がある場合は救急受診が必要です。
食道アカラシア
どんな病気?
食道の運動がうまく働かず、胃の手前の筋肉も十分に緩まないため、食べ物が胃へ進みにくくなる病気です。原因はまだ明らかではなく、逆流性食道炎とは異なる仕組みで症状が起こります。
主な症状
固い食べ物だけでなく水も通りにくい、食べたものが口へ戻る、胸が痛むなどの症状があります。夜間の逆流や咳、食事量の低下による体重減少が生じることもあり、経過には個人差があります。
検査と治療
胃カメラでがんなどによる狭窄を除外し、食道造影や食道内圧検査を組み合わせて診断します。状態に応じて薬、バルーン拡張、内視鏡で筋肉を切開するPOEM、手術などを専門施設で検討します。
受診の目安
飲み込みにくさや食物の逆流が続く場合は、食べ方だけで対処せず受診してください。体重減少も早めの相談が必要です。水や唾液が飲み込めない、強い胸痛や呼吸困難がある場合は救急受診を。
食道がん
どんな病気?
食道の粘膜に発生するがんです。日本では扁平上皮がんが多く、飲酒や喫煙などがリスクに関係します。早期には自覚症状がないことが多く、症状の有無だけでは判断できません。
主な症状
飲み込むと胸に違和感がある、食べ物がつかえる、体重が減るなどが受診のきっかけになります。進行すると胸や背中の痛み、声のかすれ、咳もみられますが、これらだけでがんとは決まりません。
検査と治療
胃カメラで食道を観察し、疑わしい部分の組織を調べます。がんと診断された場合はCTなどで広がりを評価し、病期や体の状態に応じて、専門施設で内視鏡切除、手術、放射線治療、薬物療法などを検討します。
受診の目安
新たなつかえ感、飲み込む痛み、原因不明の体重減少は検診を待たず相談してください。水も通らない、吐血、強い胸痛や息苦しさがある場合は、通常の予約を待たず救急受診が必要です。
食道静脈瘤
どんな病気?
食道の静脈がこぶのように膨らむ病気です。肝硬変などで肝臓へ流れる門脈の圧が高まり、血液が別の経路へ流れることで生じます。破れると大量出血することがあるため、予防的な評価が重要です。
主な症状
破れる前は症状がないことが多く、肝臓の病気の検査中に見つかる場合があります。出血すると吐血や黒いタール状の便が出て、貧血によるふらつき、動悸、冷汗などが現れることがあります。
検査と治療
胃カメラで静脈瘤の大きさや出血しやすさを調べ、肝機能や血流の検査も行います。リスクに応じて内視鏡による結紮・硬化療法などを専門施設で検討し、肝臓の病気の治療と経過観察を続けます。
受診の目安
肝硬変や静脈瘤を指摘された方は、無症状でも指定された検査を続けてください。吐血や黒い便は緊急の評価が必要です。大量の出血、冷汗、意識が遠のく、立てない場合は119番へ連絡してください。
胃・十二指腸
胃と十二指腸では、炎症や潰瘍、感染、胃の働きの異常などが不調の原因になります。症状が似ていても治療が異なるため、経過や服薬、ピロリ菌感染の有無も確認します。
急性胃炎・慢性胃炎
どんな病気?
胃の粘膜に炎症や傷が生じる状態です。急性の粘膜障害には飲酒や薬剤など、慢性胃炎にはピロリ菌感染が多く関係します。自己免疫による胃炎もあり、原因ごとに対応が異なります。
主な症状
みぞおちの痛み、吐き気、胃もたれなどを伴う場合がありますが、胃に炎症があっても無症状のことがあります。逆に、胃痛があるから胃炎とは限らず、潰瘍や胃の働きの異常などとの区別が必要です。
検査と治療
症状と飲酒・服薬歴を確認し、必要に応じて胃カメラ、生検、ピロリ菌検査などで原因を調べます。胃酸を抑える薬やピロリ菌の除菌などを選びます。萎縮性胃炎では経過観察の必要性も相談します。
受診の目安
症状が長引く、繰り返す、体重減少や貧血がある場合は受診してください。薬が原因と思っても処方薬は自己判断で中止しないでください。吐血、黒いタール状の便、突然の激しい腹痛は救急受診を。
胃潰瘍
どんな病気?
胃の粘膜が深く傷つく病気です。ピロリ菌感染や、痛み止めの一部である非ステロイド性抗炎症薬などが主な原因です。粘膜を守る働きが弱まり、胃酸などで傷が深くなると、出血や穿孔につながります。
主な症状
みぞおちの痛み、吐き気、食欲低下などがみられますが、痛みが目立たないこともあります。出血すると黒いタール状の便や吐血が現れ、少量の出血が続くだけでも貧血になる場合があります。
検査と治療
必要に応じて胃カメラで潰瘍を確認し、組織検査でがんとの区別も行います。胃酸を抑える薬、ピロリ菌の除菌、原因薬の調整などで治療します。出血や穿孔がある場合は、専門施設で止血処置や手術などが必要になります。
受診の目安
胃痛が続く、貧血を指摘された場合は相談してください。吐血、黒い便、突然の強い腹痛は救急受診が必要です。痛み止めや血液を固まりにくくする薬を使用中の方は、薬の一覧を必ず伝えてください。
血管拡張症
どんな病気?
胃や十二指腸の粘膜の血管が広がり、出血しやすくなる病変です。胃前庭部毛細血管拡張症などが含まれます。肝臓・腎臓の病気などと関連する場合がありますが、原因がはっきりしないこともあります。
主な症状
少量の出血が慢性的に続き、鉄欠乏性貧血による疲れやすさ、息切れ、動悸で見つかる場合があります。黒い便や吐血が出ることもあり、出血していないときには自覚症状がないこともあります。
検査と治療
血液検査で貧血を評価し、胃カメラで出血部位や血管の広がりを確認します。出血や貧血の程度に応じて鉄の補充、内視鏡による凝固・止血などを検討します。再出血することもあり、経過観察が必要です。
受診の目安
原因不明の貧血や息切れが続く場合は早めに相談してください。吐血や黒いタール状の便は救急受診が必要です。冷汗、失神、立てないほどのふらつきがある場合は119番へ連絡してください。
参考:日本消化器内視鏡学会:非静脈瘤性上部消化管出血の内視鏡診療ガイドライン第2版 / 日本消化器内視鏡学会誌:胃前庭部毛細血管拡張症への内視鏡治療
ピロリ菌感染
どんな病気?
ピロリ菌が胃に住みつき、慢性的な炎症を起こす感染症です。多くは幼少期に感染し、長く続くと胃粘膜の萎縮、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどのリスクに関係します。感染者すべてにがんが起こるわけではありません。
主な症状
感染していても症状がないことが多く、胃もたれや胃痛だけでは感染の有無はわかりません。健診や胃カメラで胃炎を指摘されたこと、過去の除菌歴、潰瘍の既往などが検査を考える手がかりになります。
検査と治療
胃の状態を確認し、尿素呼気試験や便中抗原検査などを使い分けます。感染が確認されれば抗菌薬と胃酸を抑える薬で除菌し、治療後に成功を判定します。服用中の薬は検査に影響するため事前に伝えます。
受診の目安
感染や萎縮性胃炎を指摘された場合は、無症状でも相談してください。除菌後も胃がんのリスクはゼロにならないため、胃の状態に応じて内視鏡検査を続けます。吐血や黒い便がある場合は救急受診を。
アニサキス
どんな病気?
魚介類にいる寄生虫の幼虫を生や加熱・冷凍が不十分な状態で食べ、幼虫が胃や腸の壁に入り込むことで起こります。サバ、アジ、イカなどが原因になり、酢・塩・わさびでは十分な予防になりません。
主な症状
胃では食後数時間から十数時間で激しいみぞおちの痛み、吐き気、嘔吐が起こります。腸では十数時間から数日後に強い腹痛が出る場合があります。じんましんや呼吸困難などのアレルギー症状にも注意が必要です。
検査と治療
食べた物と時間を確認し、胃アニサキス症が疑われれば胃カメラで虫体を探し、見つかれば摘出します。腸の病変は画像検査などで評価し、状態に応じて入院や手術を検討します。予防には適切な加熱・冷凍が有効です。
受診の目安
生魚を食べた後に強い胃痛が出たら、食事内容を伝えて速やかに受診してください。呼吸困難、意識が遠のくなどはアナフィラキシーの可能性があるため119番へ。症状だけでアニサキスと断定しないことも大切です。
機能性ディスペプシア
どんな病気?
胃潰瘍やがんなど症状を説明する明らかな病気がないのに、胃の不快感が慢性的に続く状態です。胃の動きや刺激の感じ方、胃酸、脳と胃腸の関係など複数の要因が関わり、気のせいではありません。
主な症状
食後の胃もたれ、少し食べただけで満腹になる、みぞおちの痛みや焼ける感じが代表的です。症状には波があり、食事や睡眠、日常生活に支障が出ることがあります。胃炎の有無と症状は必ずしも一致しません。
検査と治療
問診をもとに、年齢や警告症状に応じて胃カメラなどを行い、他の病気を調べます。食事・睡眠などの調整と、胃酸を抑える薬や胃の動きを整える薬などを組み合わせ、症状と生活への影響を見ながら治療します。
受診の目安
胃もたれや痛みが続き、食事や生活に困る場合は相談してください。体重減少、飲み込みにくさ、繰り返す嘔吐、貧血があれば早めの評価が必要です。吐血や黒い便は機能性と決めつけず救急受診を。
マロリーワイス症候群
どんな病気?
強い嘔吐などで急に圧がかかり、食道と胃のつなぎ目付近の粘膜が裂けて出血する病気です。飲酒後の嘔吐だけでなく、さまざまな原因で起こります。食道の壁全体が破れる病気とは区別して評価します。
主な症状
吐き気や嘔吐の後に吐いた物へ血が混じる、赤い血を吐くといった症状がみられます。黒い便、貧血によるふらつきや動悸を伴う場合もあります。出血の量や勢いには違いがあり、見た目だけで重症度は決まりません。
検査と治療
血圧や貧血を確認し、胃カメラで裂けた場所と出血を評価します。自然に止まる場合もありますが、持続する出血には専門施設で内視鏡による止血処置などを行います。状態に応じて輸液・輸血や入院も必要です。
受診の目安
嘔吐後の血は少量でも速やかに医療機関へ連絡してください。吐血が続く、黒い便、冷汗や強いふらつきがある場合は救急受診を。嘔吐後の強い胸痛や息苦しさは別の重い病気の可能性もあり、119番へ。
参考:日本消化器内視鏡学会:非静脈瘤性上部消化管出血の内視鏡診療ガイドライン第2版 / 福岡県薬剤師会:マロリー・ワイス症候群とは
胃ポリープ
どんな病気?
胃の粘膜から内側へ盛り上がる病変です。代表的なものに胃底腺ポリープと過形成性ポリープがあり、背景や対応が異なります。過形成性ポリープはピロリ菌による胃の炎症と関連することがあります。
主な症状
多くは症状がなく、健診や胃カメラで偶然見つかります。大きな病変などでは出血して貧血や黒い便の原因になることもあります。胃痛や胃もたれがあっても、その原因がポリープとは限りません。
検査と治療
胃カメラで大きさ、形、表面、周囲の粘膜を観察し、必要に応じて組織を調べます。種類や出血の有無などによって経過観察、ピロリ菌の除菌、内視鏡切除を検討します。検査の間隔は病変に応じて決めます。
受診の目安
ポリープを指摘されたら、種類と次の検査時期を確認してください。小さいから一律に放置、大きいから必ずがんとは判断しません。貧血は早めに相談し、吐血や黒いタール状の便は救急受診が必要です。
胃粘膜下腫瘍
どんな病気?
胃の粘膜より深い場所にでき、表面の粘膜を押し上げて見える病変の総称です。脂肪腫などの良性病変からGISTなど治療が必要な腫瘍まで含まれ、見た目の盛り上がりだけでは種類は確定できません。
主な症状
多くは無症状で、胃カメラやバリウム検査で偶然見つかります。表面に潰瘍ができると出血し、貧血、黒い便、吐血につながる場合があります。大きさや発生する場所によって症状が異なります。
検査と治療
胃カメラで大きさや変化を確認し、必要に応じて超音波内視鏡、CT、組織採取などで詳しく評価します。種類、増大の有無、症状などにより経過観察や手術などを選び、専門施設での検査を検討します。
受診の目安
指摘された場合は、大きさと性質、次の検査時期を確認してください。増大や新しい症状があれば早めに相談しましょう。吐血、黒いタール状の便、冷汗や強いふらつきがある場合は救急受診が必要です。
胃がん
どんな病気?
胃の内側を覆う粘膜の細胞から発生するがんです。ピロリ菌感染などが発生リスクに関係します。早期はほとんど無症状で、進行しても症状が乏しい場合があるため、胃痛の有無だけでは判断できません。
主な症状
胃の痛みや不快感、食欲低下、吐き気などがみられる場合があります。体重減少、食事のつかえ、貧血、黒い便も注意したい症状です。胃炎や胃潰瘍でも似た症状が出るため、検査による確認が必要です。
検査と治療
胃カメラで疑わしい部位を調べ、組織検査で診断します。診断後はCTなどで広がりを確認し、病期・がんの性質・体の状態に応じて内視鏡切除、手術、薬物療法などを選び、専門施設と治療を相談します。
受診の目安
胃の不調が続く、体重が減る、貧血や食事のつかえがある場合は、検診を待たず受診してください。除菌済みでも定期検査は相談が必要です。吐血、黒いタール状の便、強いふらつきは救急受診を。
腸
小腸・大腸の病気は、下痢や便秘、腹痛、血便などで気づくことがあります。便潜血陽性は症状がなくても精密検査の対象です。血便を痔と決めつけず、原因を確認しましょう。
感染性腸炎
どんな病気?
ウイルスや細菌などが腸に感染し、炎症を起こす病気です。汚染された食品や水、手指などを介してうつります。原因によって経過や治療が異なり、周囲に同じ症状があるかも診断の手掛かりになります。
主な症状
急な下痢、腹痛、吐き気・嘔吐、発熱などがみられます。原因によっては血便を伴います。下痢や嘔吐が続くと水分と塩分が失われ、口の渇き、尿の減少、だるさなどの脱水症状が出ます。
検査と治療
食事歴や症状を確認し、必要に応じて血液検査や便検査を行います。水分・塩分の補給が基本で、飲めない場合は点滴を検討します。抗菌薬が必要かは原因や重症度により判断し、下痢止めの自己使用にも注意します。
受診の目安
血便、強い腹痛、高熱がある場合や、水分を飲めず尿が少ない場合は速やかに受診してください。ぐったりして反応が悪い、意識がぼんやりする場合は救急受診が必要です。高齢者などは早めに相談しましょう。
虚血性腸炎
どんな病気?
大腸への血流が一時的に不足し、腸の粘膜に炎症や傷が生じる病気です。動脈硬化などの血管の要因と、便秘による腸内の圧の上昇などが重なって起こると考えられています。高齢者以外でも起こります。
主な症状
突然の下腹部痛に続いて、下痢や血便が出ることがあります。左側の腹痛が多くみられますが、場所や程度には個人差があります。感染性腸炎などでも似た症状が起こるため、症状だけでは区別できません。
検査と治療
診察や血液検査に加え、状態に応じてCTや大腸内視鏡で炎症の範囲を調べます。腸を休める食事制限や点滴が治療の中心です。重症化や腸の狭窄・壊死が疑われる場合は、入院や専門施設での治療が必要です。
受診の目安
急な腹痛と血便があるときは、痔だと思い込まず速やかに受診してください。強い痛みが続く、出血が多い、冷や汗やふらつきがある場合は救急受診が必要です。症状が軽くなっても原因を確認しましょう。
憩室出血
どんな病気?
大腸の壁にできる小さな袋状のくぼみを憩室といいます。この部分の血管が傷ついて出血するのが憩室出血です。憩室があっても多くは無症状で、必ず出血するわけではありません。炎症を起こす憩室炎とは別の状態です。
主な症状
腹痛がほとんどないまま、突然赤い血便が出ることが特徴です。便器が赤くなるほど出血したり、暗い赤色の血の塊が出たりすることもあります。出血が多いと貧血や血圧低下を起こし、ふらつきが生じます。
検査と治療
出血量や全身状態を評価し、血液検査、CT、大腸内視鏡などで原因を調べます。自然に止まることもありますが、内視鏡での止血や入院が必要な場合もあります。止血後も再出血に注意し、服用中の薬を医師に伝えます。
受診の目安
痛みがなくても血便は速やかに受診してください。大量の出血、冷や汗、息切れ、ふらつき、失神がある場合は救急受診が必要です。血液を固まりにくくする薬は自己判断で中止せず、医療者に相談しましょう。
過敏性腸症候群
どんな病気?
腹痛と便通の変化を繰り返す病気で、IBSとも呼ばれます。腸の動きや痛みの感じ方、脳と腸の情報のやり取り、腸内環境などが関係します。ストレスだけが原因ではなく、感染性腸炎の後に起こることもあります。
主な症状
腹痛に伴って下痢や便秘が起こり、両方を繰り返すタイプもあります。排便前後に痛みが変わる、便の回数や形が変化する、お腹が張るなどがみられます。通勤・通学や外出に支障が出ることもあるため、我慢は不要です。
検査と治療
症状の経過を詳しく聞き、血液・便検査などを行います。警告症状や検査異常があれば内視鏡などを追加し、他の病気を確認します。食事・睡眠・運動を整え、便通のタイプに合う薬や必要に応じた心理療法を組み合わせます。
受診の目安
腹痛や便通の乱れが続く、生活に困る場合は相談してください。血便、発熱、意図しない体重減少はIBSだけでは説明できない可能性があります。診断済みでも新しい症状が出た場合は、速やかに受診しましょう。
腸閉塞
どんな病気?
腸が狭くなったり詰まったりして、食べ物や便、ガスが先へ進めなくなる状態です。腹部手術後の癒着、腫瘍、ヘルニアなどが原因になります。腸の血流まで妨げられるタイプでは、緊急手術が必要なことがあります。
主な症状
腹痛、お腹の張り、吐き気・嘔吐、便やガスが出ないなどの症状がみられます。初期や部分的な閉塞では便が出ることもあり、便秘との自己判断は危険です。強い痛みが持続する場合は血流障害にも注意が必要です。
検査と治療
血液検査や腹部の画像検査で、詰まった場所や原因、腸の血流などを評価します。入院で食事を止め、点滴やチューブによる減圧を行うことがあります。改善しない場合や血流障害が疑われる場合は手術を検討します。
受診の目安
お腹が強く張り、繰り返し吐く、便もガスも出ない場合は救急受診してください。強い腹痛、発熱、冷や汗がある場合も待たずに受診しましょう。下剤で対処したり、食事や水分を無理にとったりせず、医療者の指示を受けます。
痔
どんな病気?
肛門周囲の病気の総称で、いぼ痔(痔核)、切れ痔(裂肛)、あな痔(痔瘻)などがあります。種類によって原因も治療も異なります。便秘や強いいきみ、硬い便などは、痔核や裂肛の症状に関係します。
主な症状
排便時の出血、肛門の痛み、腫れ、いぼの脱出などがみられます。内痔核は痛みが目立たず出血することがあり、裂肛は排便時の痛みが特徴です。ただし血便の原因は痔以外にもあり、血の色だけでは判断できません。
検査と治療
肛門の診察で種類と程度を確認し、必要に応じて大腸の検査も検討します。便を硬くしない工夫、長時間いきまない習慣、薬などで症状を和らげます。改善しない場合や痔瘻などでは、肛門科で処置・手術を検討します。
受診の目安
出血を繰り返す、痛みや腫れが続く場合は相談してください。血便を『いつもの痔』と決めつけないことが大切です。発熱を伴う強い肛門痛は速やかに受診し、大量出血やふらつき・失神がある場合は救急受診してください。
潰瘍性大腸炎
どんな病気?
大腸の粘膜に慢性的な炎症や潰瘍ができる炎症性腸疾患です。多くは直腸から連続的に広がります。原因は十分には解明されていませんが、免疫の反応や腸内環境などが関わると考えられています。
主な症状
下痢や血便、腹痛、便意があっても少量しか出ないなどの症状がみられます。炎症が強いと発熱、貧血、体重減少を伴い、皮膚や関節、眼に症状が出ることもあります。症状が落ち着く時期と悪化する時期があります。
検査と治療
血液・便検査、大腸内視鏡や生検などを組み合わせ、感染症などとの違いを確認します。病変の範囲と重症度に応じて薬を選び、炎症を抑えた寛解の維持を目指します。落ち着いても薬を自己中断せず、定期的に評価します。
受診の目安
血便や下痢が続く場合は、速やかに相談してください。診断済みの方も便の回数や出血が増えたら主治医へ連絡しましょう。強い腹痛、高熱、飲めないほどの体調悪化、出血に伴うふらつきは緊急の評価が必要です。
クローン病(Crohn病)
どんな病気?
小腸や大腸を中心に、口から肛門までの消化管に慢性的な炎症や潰瘍ができる炎症性腸疾患です。病変が離れた場所に現れることもあります。体質、腸内環境、免疫反応など複数の要因が関わると考えられています。
主な症状
腹痛や下痢のほか、発熱、体重減少、だるさ、貧血などがみられます。肛門の腫れや膿、痛みがきっかけになることもあります。炎症が続くと腸が狭くなったり、腸と別の場所をつなぐ通り道(瘻孔)ができたりします。
検査と治療
血液検査、内視鏡、CTやMRIなどを病変に合わせて選び、炎症や合併症を評価します。薬物療法や栄養療法で寛解を保ち、再燃を防ぐ治療を続けます。狭窄などには専門的な処置や手術を検討し、食事も個別に相談します。
受診の目安
下痢や腹痛が続く、体重が減る、肛門の症状が治りにくい場合は相談してください。治療中の症状悪化は早めに主治医へ連絡します。強い腹痛や発熱は速やかに、お腹の張りと嘔吐、便・ガスの停止は救急受診が必要です。
大腸ポリープ
どんな病気?
大腸の粘膜にできる盛り上がりを指します。腺腫などの腫瘍性病変と、炎症などによる病変があり、すべてががんになるわけではありません。一方で将来がんになる可能性がある種類や、がんを含むものもあります。
主な症状
小さなポリープでは自覚症状がないことが多く、便潜血検査の陽性や大腸内視鏡をきっかけに見つかります。大きさや場所によっては出血することもあります。症状がないことだけでは、ポリープの有無や性質は判断できません。
検査と治療
大腸内視鏡で大きさ、形、表面の特徴などを確認し、切除の必要性や方法を判断します。切除した場合は病理検査で種類やがんの有無を評価します。その結果や個数などに応じて、次の検査時期や追加治療を相談します。
受診の目安
便潜血陽性を指摘されたら、痔や一時的な出血と思わず精密検査を相談してください。血便や便通の変化が続く場合も受診しましょう。切除後に出血が続く、強い腹痛や発熱がある場合は、検査を受けた施設に連絡します。
参考:日本消化器内視鏡学会:大腸ポリープとはどんな病気ですか? / 日本消化器病学会:患者さんとご家族のための大腸ポリープガイド2023
大腸粘膜下腫瘍
どんな病気?
大腸の粘膜より深い層にでき、表面が正常な粘膜に覆われたふくらみを指す呼び方です。脂肪腫などの良性のものから、治療を要する腫瘍まで種類はさまざまです。『粘膜下腫瘍』という名前だけでは性質は決まりません。
主な症状
自覚症状がなく、内視鏡検査で偶然見つかることがあります。大きさや種類によっては出血や腹部症状の原因になります。ただし腹痛や便通の変化があっても、それが腫瘍によるものかは検査を含めた評価が必要です。
検査と治療
内視鏡で形や大きさを確認し、必要に応じてCT、超音波を使う検査、組織検査などを検討します。表面の組織だけでは性質が分からないこともあります。良性なら経過観察、疑わしい所見があれば専門施設で精査・治療を行います。
受診の目安
検査で指摘された場合は、必要な追加検査や経過観察の間隔を相談してください。血便、腹痛、便通の変化があれば予定を待たずに受診します。強い腹痛、お腹の張りと嘔吐、便やガスが出ない場合は救急受診が必要です。
大腸がん
どんな病気?
結腸や直腸の粘膜に生じるがんです。腺腫などから発生するものと、粘膜から直接発生するものがあります。早い段階では症状が目立たないことが多く、検診や便潜血陽性後の精密検査が発見につながります。
主な症状
進行すると血便、便が細くなる、便秘や下痢、残便感、腹痛、貧血、体重減少などが現れることがあります。腸が狭くなるとお腹の張りや嘔吐を伴います。これらは他の病気でも起こるため、症状だけで診断はできません。
検査と治療
大腸内視鏡と組織検査で診断し、必要な画像検査で広がりを調べます。深さや転移、全身状態に応じて内視鏡治療、手術、薬物療法などを選びます。専門施設と連携し、治療の選択や治療後の経過観察を進めます。
受診の目安
便潜血陽性なら症状がなくても精密検査を受けてください。血便や便通の変化、体重減少が続く場合は次の検診を待たずに相談します。大量出血やふらつき、お腹の張りと嘔吐、便・ガスが出ない場合は救急受診が必要です。
肝臓
肝臓の病気は、自覚症状が乏しいまま進むことがあります。健診で肝機能異常、肝炎ウイルス陽性、エコーの異常を指摘されたら、原因と進行度を調べることが大切です。
ウイルス性肝炎
どんな病気?
B型・C型などの肝炎ウイルスが感染し、肝臓に炎症を起こす病気です。感染経路や経過は型によって異なります。飲酒や薬による肝障害とは別の原因で、B型・C型では感染が長く続くことがあります。
主な症状
慢性肝炎では症状が乏しく、血液検査で初めて見つかることもあります。急性の肝炎では強いだるさ、食欲低下、吐き気、尿の色が濃くなる、白目や皮膚が黄色くなる黄疸などが現れます。
検査と治療
血液検査でウイルスの種類、肝臓の炎症や働きを確認します。B型では状態に応じてウイルスを抑える治療、C型ではウイルス排除を目指す飲み薬が使われます。治療後も必要な検査を続けます。
受診の目安
肝機能異常や肝炎ウイルス陽性を指摘されたら、無症状でも相談してください。検査歴がない方も確認を検討しましょう。黄疸や急な強いだるさは早めに受診し、急な意識の変化があれば救急受診が必要です。
自己免疫性肝炎
どんな病気?
免疫の仕組みが関わり、自分の肝臓の細胞が傷ついて炎症が続く病気です。原因のすべては明らかになっていません。女性に多いものの、男性にも起こり、肝炎ウイルスの感染による病気とは異なります。
主な症状
症状がなく健診の肝機能検査で見つかる場合も、急性肝炎のように発症する場合もあります。だるさ、食欲低下、黄疸のほか、関節痛や発熱がみられることもあり、症状だけでは診断できません。
検査と治療
肝機能、免疫グロブリンや自己抗体などを調べ、他の原因による肝障害を除外します。専門医療機関で肝生検を行うこともあります。ステロイドなどで炎症を抑え、効果と副作用を確認しながら治療します。
受診の目安
肝機能の異常が続く方は、飲酒量が少なくても放置せず相談してください。黄疸や強い倦怠感は早めに受診しましょう。治療中の薬は、数値が改善していても自己判断で減量・中止しないでください。
脂肪肝
どんな病気?
肝臓の細胞に脂肪が多くたまった状態です。肥満、糖尿病などの代謝異常や飲酒が関係し、やせている方にも起こります。一部では炎症や線維化が進みますが、すべての脂肪肝が肝硬変になるわけではありません。
主な症状
多くは自覚症状がなく、健診の血液検査や腹部エコーで指摘されます。症状の有無だけでは進行度を判断できません。また、肝機能の数値が軽い異常にとどまっていても、詳しい評価が必要な場合があります。
検査と治療
血液検査と腹部エコーなどで脂肪の蓄積や肝臓の状態を評価します。食事、運動、飲酒習慣を見直し、肥満がある場合は無理のない減量を目指します。糖尿病や脂質異常症などの管理も大切です。
受診の目安
「脂肪肝だけ」と考えて放置せず、健診結果を持参して相談してください。必要に応じて肝臓の硬さや線維化も評価します。極端な食事制限やサプリメント頼みの対策より、続けられる改善を一緒に考えます。
肝硬変
どんな病気?
肝臓の炎症と修復が長く続き、線維が増えて肝臓が硬くなった状態です。B型・C型肝炎、飲酒、脂肪性肝疾患などが原因になります。肝臓の働きが比較的保たれた段階と、合併症が現れる段階があります。
主な症状
初期には症状が目立たないこともあります。進行すると足のむくみ、腹水によるお腹の張り、黄疸、出血しやすさなどがみられます。食道静脈瘤の出血や、肝性脳症による意識の変化にも注意が必要です。
検査と治療
血液検査と画像検査で肝臓の働きや合併症を評価し、原因となる病気の治療と栄養管理を行います。腹水や静脈瘤などは状態に応じて専門的に治療します。肝がんを調べる定期検査も欠かせません。
受診の目安
肝硬変と診断されたら、症状が落ち着いていても通院と検査を続けてください。吐血、黒い便、急な意識の変化は救急受診が必要です。急な腹部の張りや発熱、むくみの悪化も早めに連絡しましょう。
肝嚢胞
どんな病気?
肝臓の中に液体を含む袋状の部分ができたものです。多くは良性の単純性嚢胞で、健診などの画像検査で偶然見つかります。ただし、すべてが同じ性質ではないため、まず画像で種類を確認します。
主な症状
小さいものは症状がないことがほとんどです。大きくなると周囲を圧迫し、お腹の張り、右上腹部の痛み、食欲低下などを起こすことがあります。まれに感染や出血などで急な痛みや発熱が生じます。
検査と治療
腹部エコーで大きさや内部を確認し、必要に応じて専門医療機関でCT・MRIなどを追加します。単純性と確認され無症状なら、経過観察の要否や間隔を個別に判断します。症状がある場合は処置や手術を検討します。
受診の目安
健診で指摘されたら、過去の結果も持参して増大の有無や観察方針を確認してください。急な強い腹痛や発熱は早めの受診が必要です。嚢胞が多数ある場合には、腎臓などを併せて調べることもあります。
肝血管腫
どんな病気?
肝臓の中に血管が集まってできる良性の腫瘍です。肝臓がんとは性質が異なり、多くの場合は治療を必要としません。ただし、エコーで見つかっただけでは他の病変との区別が必要なこともあります。
主な症状
ほとんどは症状も血液検査の異常もなく、健診や他の病気の画像検査で見つかります。大きな血管腫では周囲を圧迫し、右上腹部の痛みや違和感が現れることがありますが、一般的にはまれです。
検査と治療
腹部エコーに加え、必要に応じて専門医療機関で造影CT・MRIなどを行い、特徴的な画像から診断を確認します。無症状なら経過観察を基本に、その必要性と間隔を判断します。症状や急な増大がある場合は精査します。
受診の目安
指摘されたら診断の確かさと今後の確認方法を医師に相談しましょう。過去の検査画像があると比較に役立ちます。急に大きくなったといわれた場合や、続く右上腹部痛がある場合は早めに受診してください。
肝膿瘍
どんな病気?
細菌などの感染によって肝臓の中に膿がたまる病気です。胆管の感染やお腹の感染、血流などを通じて起こり、アメーバが原因の場合もあります。全身に感染が広がることがあるため、早い診断が大切です。
主な症状
高熱、寒気、右上腹部の痛み、食欲低下、吐き気などがみられます。はっきりした腹痛がなく、発熱やだるさだけのこともあります。糖尿病などの持病がある方では、重い感染に注意が必要です。
検査と治療
血液検査や腹部エコー、CTなどで膿瘍の場所と大きさ、原因を調べます。入院して原因に応じた薬で治療し、細菌性では抗菌薬を使います。必要に応じ、専門医療機関でチューブなどにより膿を排出します。
受診の目安
高熱が続く、強い寒気や右上腹部痛がある場合は、その日のうちに受診してください。息苦しさ、意識がぼんやりする、立てないほどの衰弱がある場合は救急対応が必要です。解熱薬だけで様子を見続けないでください。
肝細胞がん
どんな病気?
肝臓の主な細胞である肝細胞から発生するがんです。肝炎ウイルス、飲酒、脂肪性肝疾患などによる慢性の炎症や肝硬変が関係します。肝内胆管がんや、他の臓器から肝臓に転移したがんとは区別されます。
主な症状
初期は症状がほとんどなく、定期的な検査で発見されることがあります。進行すると腹部の痛みや圧迫感などが現れます。黄疸、むくみ、だるさは背景の肝臓病でも起こるため、症状だけでは判断できません。
検査と治療
画像検査と血液検査などで、がんの広がりと肝臓の働きを評価します。専門医療機関では手術、焼灼療法、血管を通じた治療、薬物療法などから選択します。腫瘍マーカーだけで診断することはできません。
受診の目安
慢性肝炎や肝硬変のある方は、痛みがなくても指示された定期検査を続けてください。健診で肝臓の腫瘤や肝機能異常を指摘された場合も相談しましょう。治療後も再発や新たながんを調べる通院が大切です。
胆のう・胆管
胆のうは胆汁を蓄え、胆管は胆汁を腸へ運びます。胆石や胆汁の流れの障害で、右上腹部の痛み、発熱、黄疸が起こることがあります。感染を伴う場合は急いだ評価が必要です。
胆石症
どんな病気?
胆汁に含まれる成分が固まり、胆嚢や胆管などに結石ができる病気です。石の場所によって胆嚢結石、総胆管結石、肝内結石に分かれます。胆汁の流れが妨げられると、胆嚢炎や胆管炎、膵炎を起こすことがあります。
主な症状
無症状で健診のエコーから見つかることもあります。症状が出る場合は、食後のみぞおちや右上腹部の痛み、背中への痛みなどがみられます。発熱や黄疸を伴う場合には、感染などの合併症が疑われます。
検査と治療
腹部エコーや血液検査を行い、必要に応じて専門医療機関で詳しく調べます。無症状の胆嚢結石は経過観察できることがありますが、症状があれば手術を検討します。胆管の石は内視鏡などによる治療が必要になることがあります。
受診の目安
繰り返す右上腹部痛は相談してください。強い痛みが続く、発熱、黄疸がある場合は速やかな受診が必要です。石が見つかったら、無症状でも場所を確認し、自分に合った治療・経過観察の方針を決めましょう。
胆のうポリープ
どんな病気?
胆汁をためる胆嚢の内側にできた盛り上がりです。多くはコレステロールが集まった良性の病変ですが、腫瘍性のものも含まれます。「ポリープがある」だけでがんとはいえず、大きさや形、変化から判断します。
主な症状
ポリープ自体で痛みなどの症状が出ることはほとんどなく、健診の腹部エコーで偶然見つかることが一般的です。右上腹部の痛みや発熱がある場合は、胆石や胆嚢炎など、ほかの原因も調べる必要があります。
検査と治療
エコーで大きさ、付け根の形、前回からの変化を確認します。小さく良性と考えられるものは経過観察します。大きいものや増大するもの、形が気になるものは、専門医療機関で精密検査や手術の必要性を検討します。
受診の目安
指摘されたら、結果に書かれた大きさや再検査の時期を確認してください。10mm以上、増大傾向、形の異常を指摘された場合は早めに相談しましょう。過去の健診結果を持参すると、変化を確認しやすくなります。
胆のう炎
どんな病気?
胆嚢に炎症が起こる病気です。多くは胆石が胆嚢の出口に詰まり、胆汁が流れにくくなることで始まります。細菌感染が加わって悪化することがあり、胆石がなくても重い病気などに伴って起こる場合があります。
主な症状
右上腹部やみぞおちの痛み、発熱、吐き気などが現れます。痛みが数時間以上続いたり、右肩や背中に広がったりすることもあります。高齢の方では症状が典型的でない場合もあり、全身状態にも注意します。
検査と治療
血液検査とエコーなどで炎症や胆石を確認し、重症度を評価します。入院が必要になることがあり、点滴や抗菌薬に加え、専門医療機関で胆嚢摘出手術を検討します。状態によっては胆汁を排出する処置を行います。
受診の目安
右上腹部の痛みが続く、発熱や嘔吐を伴う場合はその日のうちに受診してください。強い痛みや全身状態の悪化は救急受診が必要です。意識の変化や動けないほどの衰弱がある場合は119番へ。胆石発作と自己判断して我慢しないでください。
胆管炎
どんな病気?
肝臓で作られた胆汁を腸へ運ぶ胆管に感染が起こる病気です。胆管の石や狭窄、腫瘍などで胆汁の流れが滞ることが原因になります。感染が血液中へ広がって敗血症を起こすことがあり、緊急性の高い病気です。
主な症状
発熱や震えるほどの寒気、右上腹部・みぞおちの痛み、黄疸などがみられます。ただし、すべての症状がそろうとは限りません。重くなると血圧の低下や意識の変化が起こり、急速に全身状態が悪化します。
検査と治療
血液検査や画像検査で感染と胆管の詰まりを調べ、通常は入院して抗菌薬や点滴で治療します。必要に応じ、専門医療機関で内視鏡などにより胆汁を排出する処置を行い、原因となった石や狭窄にも対応します。
受診の目安
発熱と腹痛、黄疸が組み合わさる場合はすぐに受診してください。激しい寒気、意識がぼんやりする、ふらついて立てない場合は救急対応が必要です。黄疸がなくても、胆管の病気がある方の発熱は早めに相談しましょう。
胆のう・胆管がん
どんな病気?
胆嚢がんは胆汁を蓄える袋である胆嚢に、胆管がんは胆汁を運ぶ管である胆管に発生します。いずれも胆道がんの一種ですが、発生部位が異なります。胆管がんは肝臓の中にできるものと外にできるものに分かれます。
主な症状
早期には症状がないことが多く、検査で見つかる場合もあります。胆汁の流れが妨げられると黄疸、茶色い尿、白っぽい便、かゆみなどが現れます。腹痛、食欲低下、体重減少を伴うこともあります。
検査と治療
エコーや血液検査を手がかりに、専門医療機関でCT・MRIや必要な内視鏡検査を行います。部位や広がり、体の状態に応じて手術や薬物療法などを選びます。黄疸には胆汁の排出を助ける処置が必要な場合があります。
受診の目安
白目や皮膚が黄色い、尿が急に濃くなった、便が白っぽいなどの変化は早めに受診してください。発熱と黄疸、腹痛がある場合は急いで受診しましょう。こうした症状は胆石などでも起こるため、検査で確かめます。
すい臓
すい臓は消化酵素や血糖を調節するホルモンを作ります。上腹部や背中の痛み、体重減少などが手掛かりになりますが、症状だけでは判断できず、画像検査が必要な場合があります。
急性すい炎(急性膵炎)
どんな病気?
膵臓に急な炎症が起こる病気です。主な原因に飲酒と胆石があり、膵臓の消化酵素が自身の組織を傷つけます。軽いものから、腎臓や肺などにも影響する重いものまであり、早期の重症度評価が大切です。
主な症状
突然のみぞおち・上腹部の強い痛みが代表的で、背中まで痛むことがあります。吐き気、繰り返す嘔吐、発熱などを伴うこともあります。他の急な腹部の病気と似ているため、痛みの場所だけでは区別できません。
検査と治療
血液検査や、必要に応じたCTなどで診断と重症度を確認します。通常は入院して点滴、痛みの管理、栄養管理を行います。重症なら集中治療、胆石が原因なら状態に応じて専門的な胆道治療が必要です。
受診の目安
突然の激しい上腹部痛や、何度も吐いて水分が取れない場合は救急受診してください。冷や汗、息苦しさ、意識の変化があれば救急車を呼ぶ目安です。胃痛や飲み過ぎと決めつけず、速やかに医療機関で確認しましょう。
慢性すい炎・膵石症
どんな病気?
膵臓の炎症が長く続き、組織が硬くなって消化や血糖調節の働きが低下する病気です。長年の多量飲酒のほか、体質や原因不明の場合もあります。膵液の通り道に石ができる膵石症を伴うことがあります。
主な症状
みぞおちや背中の痛みを繰り返すことがありますが、症状のない方もいます。進行すると脂肪便、下痢、体重減少、糖尿病などが現れます。痛みが軽くなっても、膵臓の働きが回復したとは限りません。
検査と治療
血液検査と画像検査で膵臓や膵管の状態を調べます。禁酒・禁煙を基本に、病期に合わせた食事、消化酵素の補充や糖尿病の治療を行います。石や膵管の狭窄による痛みは、専門医療機関で内視鏡治療や手術を検討します。
受診の目安
繰り返す上腹部・背中の痛み、脂っぽい便、原因不明の体重減少は相談してください。急に強い痛みや嘔吐が出た場合は救急受診が必要です。長期の経過観察では栄養状態や糖尿病、膵臓の変化も確認します。
すい嚢胞(膵嚢胞)
どんな病気?
膵臓の中に液体などを含む袋状の病変ができた状態です。膵炎の後にできるものや、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)などの腫瘍性のものがあります。すべてががんではありませんが、種類により対応が異なります。
主な症状
多くは症状がなく、健診や別の目的のエコー・CTなどで見つかります。一部では腹痛や膵炎を起こすことがあります。症状がないことだけでは、経過観察の必要がないとは判断できません。
検査と治療
専門医療機関でCT・MRIや超音波内視鏡(EUS)などを組み合わせ、内部の構造や膵管の状態を確認します。種類、大きさ、内部の結節、変化などから定期検査か手術かを判断し、個別に観察方針を決めます。
受診の目安
指摘されたら消化器内科で種類と今後の検査予定を確認しましょう。大きさが変わった場合や、新たな腹痛、黄疸、体重減少などがあれば早めに相談してください。急な激痛や繰り返す嘔吐は救急受診が必要です。
参考:日本消化器内視鏡学会:膵嚢胞が見つかったけれど、どうしたらいいですか / 国立がん研究センター:膵臓がんについて(関連する疾患・IPMN)
すい臓がん(膵がん)
どんな病気?
胃の後ろにある膵臓に発生するがんで、多くは膵液の通り道である膵管から生じます。慢性膵炎や喫煙、家族歴などが発症と関係しますが、原因が一つに決まるわけではありません。早期には見つけにくい病気です。
主な症状
小さいうちは症状が出にくく、進行すると腹痛、背中の痛み、食欲低下、体重減少、黄疸などが現れることがあります。新しく糖尿病が見つかったり、血糖管理が急に悪くなったりすることもあります。
検査と治療
血液検査やエコーを手がかりに、専門医療機関でCT・MRI、超音波内視鏡(EUS)などの精密検査を行います。がんの広がりと体の状態に応じ、手術や薬物療法などを組み合わせます。痛みや黄疸への治療も行います。
受診の目安
原因不明の体重減少、続く上腹部・背中の痛み、黄疸は早めに相談してください。こうした症状は他の病気でも起こります。膵臓の病気や強い家族歴がある方は、症状がなくても必要な検査について医師と相談しましょう。
受診・検査の相談について
同じ症状でも、必要な検査や治療は年齢、持病、服薬、症状の続き方によって異なります。胃カメラや大腸カメラを全員に行うわけではなく、問診と診察から必要性を判断します。
症状の経過を確認
いつから、どこが、食事や排便とどう関係するかをお伝えください。お薬手帳や健診結果、過去の検査結果があればご持参ください。
必要な検査を相談
血液・便検査、内視鏡、超音波などから、症状に合う検査を検討します。専門的な画像検査や処置が必要な場合は、専門医療機関への紹介をご案内します。
治療と経過観察
結果に応じて生活習慣の調整や薬の治療を相談し、必要な再検査の時期も確認します。症状が落ち着いても、指示された通院や検査を続けることが大切です。
続く不調や健診の異常は、消化器内科へご相談ください。
消化器内科の診療案内 / 胃カメラの流れ・費用 / 大腸カメラの流れ・費用
強い症状がある場合は、上記の救急受診の目安を優先してください。
説明の参考資料
各疾患の説明には、学会・公的機関などの参考資料へのリンクを掲載しています。救急受診の目安は総務省消防庁「救急車利用マニュアル」も参考にしています。掲載内容は一般的な説明であり、個々の診断や検査・治療は診察のうえで判断します。
